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ダイハツ タント L350S
H18 120,000km
エンジンが不調ということでご入庫いただきました。
まずは、症状を確認すると、
・アイドリングで振動大(エンストまでは行かない)
・エアコンをONにするとさらに振動大
・アクセルを踏んだときの回転の吹け上がりが悪く、ドドドドと言いながら回転が上がる
・走行時は加速が悪い
・エンジン警告灯は点灯していない
といった感じです。
エンジンの不調をyoutubeにあげてみました。
ドドドドドドドって感じですね。
では、点検開始です!
まずはスキャンツールを接続してコンピュータ診断を実施。
コンピュータ診断はエンジンチェックランプが点灯した故障を特定するときだけでなく、エンジンの状態の確認や大まかな不具合箇所の絞込みにも有効なんです。
まずは自己診断で故障コードを確認すると
「P0120 スロットルセンサ信号」がありました。
ですが、じゃあストッロルセンサーが悪いので交換~とはなりません。
この故障コードは「スロットル ポジション センサからの信号に異常が発生したとき」に入力されるだけなので
センサーかもしれないし、配線かもしれないし、コンピュータかもしれません。
次にデータモニターを実施。
データが見にくいので、クリックで拡大表示してください。
データを見ると「スロットル開度 11%」となっています。
この数値は正常?異常?ということになりますが、同年式のタントのお客さまのデータも同じ数値なので正常となります!
整備書には正常値が記載されていないですが、当社では車検時にデータをとって蓄積しているので、こういったときに迅速な判断が出来ます。
とりあえず、スロットル開度はアクセルに連動してしっかり動いているので、いったん放置します。
では、どの数値が悪いのか・・・となりますが、注目は「VFモニター1.178」
整備書にもこの数値が何を表しているかも記載がありませんが、おそらく空燃比補正学習値です。
空気と燃料の割合は「理論空燃比」という排気ガスが綺麗になるちょうど良い割合があり、コンピュータにはプログラムされています。
しかし、使用するにつれて「ズレ」が出てくるので、排気ガスの状態をセンサーでチェックして補正をかけています。
「1.178」は燃料を1.178倍増量しているということだと思います。(整備書にはキチンと記載がないので・・・)
プログラムされている燃料噴射量では燃料が足らない(リーン/薄い)状態ということなんですね。
データから見える状態は「スロットルセンサーは大丈夫そう。微妙に燃焼状態が悪いみたい。」といったところでしょうか。
原因を特定するために、他の点検も実施しましょう。
まずは、排気ガス点検。
CO→2% HC→20ppm
COがかなり多くなっています。ってことは燃料が多い(リッチ/濃い)状態なので、データモニターと逆の状態ですね。
疑問は残りますが、次はスパークプラグの点検。
#1シリンダーのスパークプラグに燃料が付着しています。
#1シリンダーはきちんと燃焼が出来ていないようですね。
あとは#3シリンダーのイグニッションコイルだけ新しいですね。
おそらく以前、交換していると思われます。
#1シリンダーのイグニッションコイルのコネクタを外しても、エンジンの変化は少ないですが、#2,3を外すとエンジンが止まりそうになります。
また、イグニッションコイルを入れ替えて同様の点検をすると、入れ替えた先だけエンジン変化が少ない状態になります。
この結果、#1シリンダーのイグニッションコイル不良とわかります。
一応原因はわかりましたが、点火の波形をオシロスコープでチェック。
G-SCAN2にはオシロスコープ機能も搭載されており、点火2次波形も測定できます。
イグニッションコイルの上に専用の検出プローブを置いて測定します。
#3
これは向きが逆転しているので、ミスショットです。
#3イグニッションコイルは交換済でメーカーが変わっているので、その影響ですね。(修理後の波形はちゃんと反転させて記録しました)
反転
#3は電圧がかなり高いですね。
スパークプラグのギャップが大きいと電圧が高くなりますが、これは#1、2イグニッションコイルが劣化して電圧が上がらなくなったように感じます。
点火2次波形は燃焼状態によって変化するため、とても奥が深いです。
私はまだまだ理解不足なので、日々勉強です。
#1と#2のイグニッションコイルを入れ替えて再度測定すると、波形がそのまま入れ替わったので、イグニッションコイルの影響で波形が変化していることがわかりました。
というわけで、#1、2イグニッションコイル交換で見積を作成して、お客さまへ連絡。
了承いただいたので交換します!
左が旧イグニッションコイル(ダイヤモンド電機製)、右の新イグニッションコイルはデンソー製になってますね。
交換作業は点検と手間は変わらないので、ささっと交換。
交換後、エンジンを始動すると滑らかに始動し、アイドリングも安定しています。
排気ガスもCOが0.08%と下がりました。
エンジンデーター
VFモニター値は1.063と下がり、1に近い数値になりました。
ちなみにスロットルセンサ信号異常は故障コードの再入力がないので、今回は様子見です。
#2
点火波形も良くなりました。
#2、3は若干スパークプラグが摩耗していたので、その影響が波形に出てるかなー?って感じですが、大きな影響はないですね。
以上で修理完了です!
スパークプラグが摩耗するとイグニッションコイルへの負担が大きくなり、イグニッションコイル故障の可能性が高くなります。
スパークプラグは指定交換時期以内で交換すると、結果としてお客さまの負担が少なくなるので、定期点検・メンテナンスが重要ということですね!
ご入庫ありがとうございました。
【カテゴリー】一般修理