レクサス GS350 GRS191
H21 130,000㎞
エンジンチェックランプが点灯したということでご入庫いただきました。
早速スキャンツールを接続して故障コードを確認します。
「P0172 リッチ異常(Bank1)」と「P0175 リッチ異常(Bank2)」が出力されていました。
このコードは「空燃比センサー」からの信号がリッチ(燃料が多い状態)で噴射量の減量補正が一定値を超えている時に出力されます。
空燃比センサーは排気ガス中の空気と燃料の比率をみており、コンピュータはその数値から「燃料の増減」をフィードバック制御しています。
要するに「この空気の量なら燃料はこの位がちょうどいい!」とコンピュータは基本噴射量を決めますが、その量噴射した結果「排気ガス中の燃料が多いって言ってるからちょっと減らそう!」と制御しています。
エンジンのデータをみてみると、F/B(フィードバック)学習値が-35%と、かなり減量補正をしています。
(右の数値(0%・-1.6%)はこの車両の前回車検時のデータです。当社では車検時にコンピュータ診断を実施しており、データの保管をしています)
お預かり時はエンジンの始動や走行に大きな影響が出ていないとのことでしたが、アイドリングが不安定な状態でした。
点検していくと、次第にエンジン始動不良や吹き上げ不良の症状が出てきていました。
と、ここまでの状況ではエンジンの燃焼に関わる全ての装置・部品・箇所に不具合の可能性があり、特定が難しいので、もう少しデータを見ていって、原因の絞り込みをします。
このGS350はV型6気筒エンジン(シリンダーを左右交互にV字型に配置)なので、左右それぞれの排気管に空燃比センサーが付いています。
(そのためBank1、Bank2という表記があります)
F/B学習値がBank1、Bank2ともにマイナス補正が大きくなっているので、それぞれ個別に装着されている空燃比センサーやインジェクターなどは不具合の可能性が低く、左右両方で共通している箇所の不具合が想定されます。
ここで、先程のエンジンデータを詳しく見ていくと
吸入空気量の数値に開きがあるのが分かります。
吸入空気量は燃料の基本噴射量を決定する重要なデータで、少しでも数値が違うとエンジン制御に大きな影響を与えるデータです。
ですが、整備要領書では標準値が「4.0~6.0g/sec(アイドル回転時)」となっており、整備要領書から判断すると不具合が起きている状態(5.01g/sec)は正常で、正常時(3.32g/sec)の数値が異常という判断になってしまいます。
エンジン回転数3000rpm時も「不具合時21.42g/sec」「正常時14.29g/sec」で、「標準値18~22g/sec」なので、不具合時は正常との判定になります。
このように整備要領書の標準値は幅が広かったり、実際の車両データと数値が違うことがよくあります。
その車両の生のデータがなければ吸入空気量は正常と判断して、故障診断は迷宮に入り込んでしまう可能性があります。
したがって当社では車検時にエンジンデータ(アイドリング~3000rpmの連続データ)を記録・保管することで、このような比較点検を迅速・正確に行えるようにしているのです。
(データがあるからといって毎回簡単に診断できるわけではないのが、故障診断の難しいところでもあり、面白いところでもありますが笑)
というわけで、スキャンツールを使用した故障コード・データの確認から「吸入空気量」が怪しいと絞り込みが出来たので、吸入空気量を検出している「エアフローメーター(センサー)」を点検します。
点検方法としては、センサーに異物や汚れがないかの点検や、各配線の導通などを点検して異常がなければセンサー本体不良と判断します。
エアフローメーターは吸気系統についており、エアクリーナエレメントの後ろにあります。
吸入空気量を検出する部分は見えにくい位置にあるのですが、汚れなどの付着はありませんでした。
エアフローメーター不良のようです。
エアフローメーターの特性不良により、実際の吸入空気量よりも多い数値を出力していたため、燃料過多(リッチ)となり、警告灯点灯と判断しました。
新品と交換すると、エンジンの調子も良くなり、エンジンの吸入空気量・F/B補正値も良好になりました!
リッチ異常・リーン異常は診断が難しい状況が多くありますが、当社ではその車両の今までのデータと比較することで、しっかりと故障診断できるようにしております。
車検時は無料でコンピュータ診断を実施しておりますので、車検を検討する際の判断材料のひとつとして考えていただけると良いかと思います。
ご入庫ありがとうございました!
【カテゴリー】一般修理